歌人でもあり、幕末大老の井伊直弼氏のお孫さんで彦根市長を九期お努めになった井伊直愛氏夫人でもあります井伊文子さん(共に故人)の福祉へのあつい思いを継承し、2009年(平成11年)に設立されましたNPO法人夢・同人の墨蹟事業の委譲を受けて、2021年(令和3年)4月1日に設立いたしました。

 『無力な私に可能なことは何なのか 鈍(にぶ)色の空に目を放つ』 井伊文子

 井伊文子さんは、琉球王朝最後の王尚泰のひ孫さんとして、第二次世界大戦で傷ついた沖縄を憂い、また、ご本人も結核や心臓病など重い病にさいなまれた経験から、真の平和と豊かな福祉の実現に、その生涯をそそがれ、病気療養中には膨大な書物の点字翻訳に従事され、回復後は沖縄県内の高校生の就学支援目的で『佛桑花の会』や重度知的障害者施設『止揚学園』(滋賀県東近江市)、重度身体障害者療護施設『湖北タウンホーム』など数々の慈善事業、社会福祉施設の設立に寄与されました。

 残念ながら、平成16年11月22日に87歳でご逝去されましたが、その遺言により、ご自身の葬儀のご香典一切を社会福祉向上に障害者団体へご寄付をされ、最後の最後まで貫き通されたその姿勢に、当時の彦根市長をはじめ、多くの人が涙に包まれました。生涯かかって築かれたその功績は人知れずひっそりと咲いている花のように、しおらしく貴いものでした。

 そんな井伊文子さんが、福祉施設への資金援助の一環として1996平成8年(平成8年)に立ち上げられ、同年二十九寺院の高僧・名僧から貴い墨蹟を賜り、スタートしたのが墨蹟事業でありました。以来20年以上にわたって事業を継承し、今日、ご恵贈いただきました社寺仏閣の高僧・名僧・聖職者様の数は100名様を超えるという誉を授かり、三千枚に迫る真筆書をチャリティー販売され、NPO法人夢・同人から社会福祉に寄付された寄付金の総額は2000万円を上回りました。

 私たちはこの素晴らしい文化事業が途絶えることなくこれからも永続させたいと願い、当法人の名前を、井伊文子さんの『文』を満開に花咲かせたいと、そして新しいものに流されることなく古きを忘れずという意味で旧字で『華』、そしてみんが気軽に集える『舎』となれるように、『文華舎』と命名させていただきました。もちろん、法人運営の根幹にしたいと思っています。あわせて、これらを育んだ滋賀、びわ湖のほとりから、守りたい文化、知らしめたい文化、感謝されるべく文化など先人たちが愛し育んできた文化の維持発展に注力しながら、滋賀の素敵を世界の人に発信し、いいハート、いいアートなどびわ湖のほとりから、たくさんの いい~ を多くの人に伝える所存です。

 2020年(令和2年)はいろんな意味で試練の年となりましたが、逆境はチャンスへのステップ、いい未来つくりに尽心尽力するべきがんばります。