現代高僧・名僧墨蹟とは、現代日本を代表する寺院の住職や宗派管長・長老、また、修験・修行満行者などの有徳者が書かれた直筆書をいい、現世に生きる人々の安寧や社会平和を願った高潔な思い、特別な祈りが込められた書をいいます。

墨蹟とは本来、中国の宗・元時代の禅僧、および、鎌倉・室町時代の禅僧が書かれた墨の蹟、筆跡のことを言います。室町時代以後、茶道が盛んになるにつれ、墨蹟は茶席に普及し、さらに、わび茶を大成した千利休が「南法録」の中で、「掛物ほど第一の道具はなし」と記したことから、墨蹟の掛軸は、茶席や床の間に欠かせない道具となりました。江戸時代以降になると臨済宗、黄檗宗、今日では多くの宗派の高僧・名僧も揮毫されるようになり、日本の精神文化にかかせないものになりました。

今日、日本人の生活様式も大きく変わり、「床の間にお軸を掛ける」という風習も少なくなりつつありますが、墨蹟とは本来、精神修養を極めた高僧・名僧が人々に贈る応援メッセージなのです。 古今東西老若男女、どれだけ時代が進み社会が変化しても、人の心は悩めるものです。心を養い豊かにすることこそ、幸せへの第一歩。古より心のあり方を簡素に記した墨蹟は見る人の心に響く未来への贈り物として、大切にされています。

  

  

  

  

引首印(いんしゅいん)関房印(かんぽいん)

関房印(かんぽいん)とも呼ばれ、一般的に書のはじまり、表の印として用いられます。

印の刻文は、禅語・仏語・詩句・熟語・座右の銘などがよく使われ、揮毫者の人間性がうかがえます。 但し、本来押印する決まりはなく、飾りや作品のしまりをよくするために押される場合もあります。

  

語句(ごく)

和紙にしたためられることを揮毫・染筆・入筆をいわれ、墨蹟の場合は基本的には漢字で禅語・仏教語が用いられます。

禅では、「不立文字、教外別伝、直指人心、見性成仏」と言って師匠といえども弟子に言葉でその真髄を伝えるのは難しいとされ、読む人がその人生や経験から自らの意味を悟るものと言われています。

  

署名(しょめい)

記名ともいわれ、実際に書いた人の(作者・筆者・揮毫者・染筆者)の所属、役職、名を記すもので、一般的な寺院の場合、山号・寺院名・僧位僧職、法名、茶道では雅号が記されます。

  

落款(らっかん) ※落成款識(らくせいかんし)の略語。

入筆した書に製作時や記名、識語(揮毫の場所、状況、動機など)、詩文などを書き付けたもの、またそれら行為などを記した文字を款記と言います。

入筆した書に捺す印章を落款印と言います。作品に落款を押すのは、自己の真実を尽くした責任の証明とされ、いわゆる本物であることを意味しています。

一般的な墨蹟の場合、上の「款」印は陰刻と言い、僧位僧職、いわゆる立場が示され、墨蹟の場合はこの款印が最も大切とされます。下の「識」印は、陽刻と言い、揮毫者の法名など個人名が示されます。

※あくまで当法人による解釈でありますので参考としてご一読くださいますようお願い申し上げます。